ギター弦 D'Addario EXP16

安い弦から、長寿命のコーティング弦に張り替えてみた。
D'Addario EXP Coated Phosphor Bronze Wound EXP16 Light 12-53
.012、.016、.024、.032、.042、.053
1350円 (サウンドハウス)

今までタカミネブランドの安い弦(1セット280円)を使っていたが、張替え後2週間程度で音のキラキラがなくなった。本来その時点で交換すべきなのだろうけど、音が死んだままダラダラと数ヶ月使ったりしていた。これは演奏にも影響するので、あまりよくない。今回EXP16がどれぐらい持つのか分からないが、半年ぐらい持ってくれれば、1ヶ月あたり225円となり、お得な計算になるが、どうなることか。まぁ3ヶ月そこそこの音が持続すれば、これを使い続けようかと思う。

実際張り替えてみて
今まで安物弦を使っていたからか、EXP16は倍音が、すごく出てビビった。コーティング弦は音的には理想とは言えないのに、この倍音は何なのだろう? やっぱり安い弦はイマイチだったということかな。1、2弦のプレーン弦の音は大きく違わないが、巻弦の倍音の出方が安物とはまるで違う。単音でも寂しい音ではないので、弾き方に影響が出そうだ。今まで低音弦が弱弱しくボワンとした歯切れの悪い音だったのに、弦をEXP16に張り替えたら、ガツンと瞬発力のある力強い音になった。このギターがこんなにいい音出るとは知らなかったよ。弦はそこそこのものを使うべきだと今更ながら思ったり。

EXP16について
下のパッケージにもあるように、EXP16はあらかじめコーティングした弦を芯線に巻きつけているため、音が明るく大きいそうだ。1、2弦のプレーン弦は厚いめっき処理等で錆防止をしているようだ。他社のコーティング弦といえば、ELIXIRが有名だけど、ELIXIRは完成した巻弦全体にコーティングしているようだ。D'Addarioとは構造的に大きく違うため、弾いた感触も音も違うそうだ。

弦の太さ
弦の太さは一般的にインチ表示なので分かりにくい。EXP16のパッケージ裏にはちゃんとmm表示もあって親切。ギターを弾く人はインチに慣れているのかな? 私は無理だ。感覚的にミリならしっくりくるけど。
.012inch 0.30mm
.016inch 0.41mm
.024inch 0.61mm
.032inch 0.81mm
.042inch 1.07mm
.053inch 1.35mm

弦の材質
Phosphor Bronzeというもので、銅と錫の合金にリンを加えたもの。見た目からして、これは巻弦の巻いてある線の材料。プレーン弦と芯線は違う材質、多分ピアノ線にめっき処理だと思われる。材質は炭素鋼。ピアノに使っているからピアノ線と呼ばれているが、工業規格としてもピアノ線が正式名称。よくスプリングに使われている。

弦の寿命
使い方、環境、メンテで大きく変わるので一概に言えないが、最低でも1ヶ月に1回交換するのがよさそうだ。でもこれは一般的な弦の話なので、EXP16はその2~3倍と考えていいかもしれない。

錆の原因
普通の弦の場合、特に1、2弦は剥き出しになっているため錆びやすい。材質はピアノ線。表面はメッキ処理されていても簡単に錆びてしまう。手からの水分や油とか垢が弦にこびりついて1時間もすると錆びて行く。数十分弾いたらまめに拭くようにしないとだめ。やっていて気づいた点としては、強く拭くと摩擦熱で酸化してしまう。いわゆる黒錆状態になる。拭くときは、やさしくゆっくり拭かないとだめ。特に1、2弦。EXP16は耐腐食性を考慮しためっき処理がされているので、多少はマシだと思われるが、同じように手入れは必要だと思われる。

2週間ちょっと経って 2010/11/16
今までの安い弦のターニングポイントとなる2週間が経過した。通常の弦なら1、2弦は錆で真っ黒くなって、音は死にかける時期だ。

D'Addario EXP16の状態は、2週間以上経っても錆びずにキラキラしている。触った感触もツルツルしていて、新品の状態が維持されているようだ。さすが高いだけのことはある。

音は、さすがに張替え時の派手な高音域は失われてきて、随分と落ち着いた感じになった。でも以前の安い弦に比べれば、遥かに高域も出ている。低域の出方もしっかりしている。この音のまま数ヶ月持てば言うことはないのだが、どうなるかな? 多分だんだんと高域の倍音成分がおとなしくなって寂しくなる気がするが・・・

約半年経って 2011/04/27
音は、かなりおとなしくなった。倍音の出方が新品の時とまるで違う。でも練習では特に問題ない。錆の進行はゆっくりで、1、2弦が部分的に黒っぽくなったぐらい。表面は、まだつるつるしているので、フレットを削るとか、そういう害はない。チューニングも問題なく正常に音が合う。半年使えれば安上がりと思って使い始めたEXP16だが、結果は立派なもの。音的には、すでに張替えの時期は過ぎているけど、弦が切れるまで使ってみようかな。

弦が切れたので交換 2011/06/15
サドルを交換する際に弦を張ったり、取り外したりを繰り返していたら、1弦がプチッと切れてしまった。あきらかな金属疲労。どうしても細い弦は切れやすい。通常は、弦を張ったら緩めることもなく、そのまま使い続けるので、弦が切れることはめったにない。よくギターを弾き終わったら弦を緩める人がいるが、あれは弦が金属疲労しやすく、1弦もしくは芯線が細い3弦が切れやすくなると思う。

7ヶ月振りに新しいEXP16に交換した。やはり新品の倍音は半端なく出る。ギターが鳴っているというよりは、弦が鳴っているという印象。とにかくシャリシャリした音。これは巻弦の話で、プレーン弦に関しては、新品も、7ヶ月張った弦もあまり変わらなかった。そこで疑問がでる。巻弦の音が劣化する理由は何だろうか?

音が劣化する原因
ピアノも同じような構造の弦を張っているが、家庭での通常使用では10年以上使えるのに対して、ギターは圧倒的に短い。ギターの弦の芯線はピアノに比べ細いので、金属疲労は起こしやすい。でも金属疲労によって起きる障害は、オクターブチューニングが合わなくなったり、切れたりする現象。半年ぐらいではギターの弦が金属疲労を起こすことはない。ピアノは弦に触れないというところが長寿のポイントだろう。対してギターは触れまくる。この差は大きい。実際プレーン弦に関しては、錆が進行しない限り音もそれほど劣化した印象はない。問題の巻弦は、手の水分、油、汚れが巻弦の隙間に入り込んでいく。一見隙間などなさそうにも見えるが、6角断面の芯線に円断面の巻線なので、内部は隙間だらけ。その空間に汚れがたまっていく。これが音が劣化する原因と考えられる。これらを除去できれば、新品の状態がそれなりに維持できそうだ。

古い弦をばらして確認してみた。外見はきれいでも内部は緑の汚れがぎっちり詰まっていました。音の劣化原因は明らかにこれ。

下は新品の巻き弦。内部はきれいなまま。

クリーニング方法をネットで調べてみる。弦を茹でるという興味深いページが結構あった。弦を茹でることでクリーニングするという発想なのかもしれない。でも熱を加えることで悪い影響も出そうな気がする。巻弦のように、がっちり組まれている熱膨張率の違う素材を茹でてしまうというのは、かなり過激だ。冷えれば元通り?そんな都合よくはいかないと思う。実際音は復活するが数日でまた死ぬようだ。何かおかしいように思う・・・ EXP16のようなコーティング弦ではコーティングにも悪影響がでそうだ。個人的にやるつもりはない。やはり高熱を加えるというのは避けたい。そういう意味では常温でクリーニングできる超音波洗浄機がよいと思ったが、残念ながら持っていない。たぶん効果は絶大だと思う。内部の汚れをうまく除去する方法があれば、弦は本当に復活すると思う。

とりあえず簡単な実験をしてみて、うまく取り除く方法を見つけたら紹介しようと思う。

またELIXIRという元祖コーティング弦があるが、こちらは巻弦全体にコーティングしているので隙間に汚れが溜まりにくい構造。一度試してみようかな。

オクターブチューニングが合わなくなってきたので交換 2013/03/02
1年半以上使ってしまった。さすがに錆びが出てきて、1、2 弦のオクターブチューニングが合わなくなってきた。開放で合わせると、7 フレット辺りで、7 から 10 セントぐらいズレるようになってしまった。その理由はこっちのページに書いてみた。弦交換すると、オクターブチューニングはばっちりになった。どのフレットも3セント以下に納まっている。やっぱり倍音が豊かな音は気持ちよい。