mechanical pencil シャープペンシル
ぺんてる VICUNA ビクーニャ シャープペン

以前使った低粘度油性の「ぺんてるビクーニャ」の軸が気に入ったので、そのビクーニャ シャープペン(イエローグリーン)を買ってみた。 用途は外出先で使うため。紛失しても惜しくない価格(定価150円税抜)、余計な機能がなく、日本製ぺんてるの工作、組立精度が期待できる。

最近、設計やスケッチなどには「ぺんてる GRAPH1000 for PRO」を使用している。よく使っていた「ステッドラーの芯ホルダー Mars780」は芯が切れたタイミングで使用を一時停止中。これからシャープペンを使いこなしてみようと思っている。スケッチでは鉛筆も並行して使うけど。


VICUNA シャープペン PX155 主な仕様

発売日:2011年2月24日
価格:150円(税別) 購入価格139円(税込)
内蔵芯:HB 2本
芯径:0.5mm
替消しゴム:XPXE-4
サイズ:15x12x145mm
重さ:11g
機構:ノック式
軸色:ブラック、オレンジ、イエローグリーン、ピンク、スカイブルー、パープル
材質:
軸、クリップ:再生PC
ノック:PC
グリップ:エラストマー
消しゴム受け:POM
先金:真鍮
芯は11mm程度まで使用可能。これ以下だと回り始める
芯の出方 1回のノックで0.5mm


第一印象

ビクーニャというと低粘度油性ボールペンというイメージで、シャープペンはビクーニャシリーズのオマケ程度の印象しかなく、ネット上でもビクーニャ シャープペンについて触れている記事は皆無だ。 そんな地味な存在だが、予想以上の出来だった。個人的にシャープペンは以下のポイントで評価しているが、ビクーニャはすべてクリア。100円台シャープペンとしては驚異的。

1.ノックの精度

1回のノックで芯の出が0.5mm前後で安定していること。 これが一番過酷なポイント。手持ちの100円程度のシャープペンでクリアしているのは「ぺんてる」だけ。多くは安物シャープペンは1mmぐらい出てしまう。芯を長めに出して折ってくれというメーカーの陰謀だろうか? 個人的には0.5mmが基準。製図用の多くは0.5mmで、これに慣れてしまうと、1mmも出てしまうものは違和感しか感じない。このビクーニャは安定して0.5mmが出ている。


2.先端のたわみがないこと

これも多くのプラ製シャープペンでは実現できていない。ちょっと強めに紙に押し当てると、どうしてもグニャっとたわんでしまう。チャックからチップまで金属製だとかなり改善されるが、100円ペンはコスト優先なので妥協する部分なのだろう。ビクーニャはチャックもチップも金属製でたわみはほとんど感じられない。また標準装備とも言えるチップスライドがないので、そういう部分の軟弱さもなく、価格からは想像できないぐらいの剛性を実現している。
またチップ形状は約1.75mmのガイドパイプがある。製図用は4mmあるので、その半分くらいしかないが、それでも円錐状のチップに比べれば視認性はかなりよくなる。携帯性や落下事故などでのダメージを最小限にしようとすると、これぐらいの長さが適度なのかもしれない。

3.ペン全体のガタや遊びが少ないこと

ペンを振ってキャップとか、パーツがカタカタするようなペンは好みではない。手持ちのぺんてる製は価格に関係なく、どれも音がしない。キャップ等のはめ合いがすばらしく、設計ノウハウと、それを実現する成型精度&工作精度が極めて高い。またノックした時の感触も軽めでカチカチと気持ちよく、遊びが少ないのがよく分かる。

上記の3項目は基本的な要素であるが、これをクリアしている安物シャープペンは少ない。まぁこういう部分は渋めで売れるためのポイントにはならないからだろう。製図用とか道具としての機能が求められるシャープペンになると、さすがに実現されている。これ以降は好みのポイントとなる。

4.グリップと軸径

個人的にはフニャフニャで吸い付くような太いグリップは苦手。硬質なグリップで特に問題を感じない。耐久性も考えると金属のグリップのローレット加工がよいと思っている。
ビクーニャは軸全体がグリップのようになっていて、ラバーグリップぽさはない。素材は硬めのエラストマーでフニャフニャせず指離れがよい。また指紋のようなパターンがあって、これが結構指にフィットし、力を入れるときに微妙なコントロールができる。軸一体のメリットとしてグリップだけが回ってしまうこともない。 このグリップはGRAPH1000よりも優れているように思う。軸形状含めて、なかなかの完成度だと思う。
軸径はグリップ先端が9mmで、一番膨らんだ中央部が11.5mm。
また機能とは関係ないのだが、2色成型によるVICUNAロゴが良いかんじ。表面に凹凸がないため汚れなどがたまらないし、印刷のように擦れてしまうこともない。なかなか好印象。ただ、スニーカーのようなシルバーのラインはいただけない。軸全体がエラストマーで覆われていたらもっとよかった。軸は再生PCのようだが、アルミ粉等を混ぜてシルバー風にしている。装飾的な意味からだが、樹脂の流れのウエルドが目立ってしまって、それほどよいとは思えない。まぁこの処理がなければメタリックな感じにもならないので、意図としては分かるのだが。


5.余計な機能が無いこと

特別な機能がないということは、上記の基本性能が期待できる。チップスライドぐらいは携帯時に必須という気もするが、書くことを優先させると、チップは固定がよい。ビクーニャは携帯時はちょっと気を使うが基本に忠実という印象。巷では三菱鉛筆のクルトガとかが流行っているようだが、ギミックが優先していて、基本がガタガタという印象。でもそういうものが売れるのが現実のようだ。三菱鉛筆というメーカーは好きで鉛筆とかボールペンは愛用しているが、シャープペンはあまり感心しないなぁ。ぺんてるは、どの筆記具も一定レベル以上という印象で、特に精度の面では他メーカーの上を行っているように思える。手持ちの安物シャープペンを比較する限り圧倒的精度を誇る。中国製ぺんてるは微妙だけど・・・

6.クリップの位置

ペンを回転させながら使うので、クリップの位置が低すぎると邪魔になってしまう。取り外せる場合は取ってしまうことも多い。ビクーニャはぎりぎり邪魔にならない位置でセーフ。



どのペンでも共通のチェックポイントは上記のようなところで、後は使ってみて判断という感じ。以下はビクーニャのディテールについて。

クリップ部の透明パーツにJAPANとある。日本製健在。

シールは剥がしてしまうので、何が書いてあったかの記録。トラブルのときは「クリップを外して分解してね」ということらしい。

消しゴムとキャップ。シャープペンに付いている消しゴムは使ったことがないなぁ。

エラストマーと軸のPCは後から組み立てられたのではなく、成型時に一体化されている。


半分解

クリップを回して、中身を出してみたところ。やや特殊な作りであることがわかる。チップは軸と固定されているようだ。ボールペンのビクーニャと同じ軸なのだろうか? ボールペンを優先して作って、シャープペンはとりあえず的な企画という印象だ。 想像するにビクーニャボールペンの軸を流用してシャープペンを作るという企画が出て、中身も現在あるものを流用しろという指示で、設計者が苦労して作ったというところか。寄せ集め設計ではあるが、設計者のセンスと経験で無難にまとめ上げたという感じがする。もし、こんな背景で開発していたら、出来たものは不釣り合いなぐらい完成度が高いと思う。

さらに中身は簡単にここまでバラせる。

謎のスプリング。特に何かの機能を果たしているようには見えないのだが? 考えられるのは重量バランスぐらいか。

チャックは真鍮製で信頼の3つ割タイプだが、径がやたらと小さい。耐久性と安定性でちょっと気になるところ。これって多機能ペンで使われているパーツの流用かな?


まとめ

分解してみると、とりあえず的な設計だったりするけど、安物シャープペンにしては上出来だと思えた。基本性能を優先して、妙な機能を売りにしないところが素晴らしい。

また中国製ぺんてる.e-Tintのように妙な書き味ということもなく、GRAPH1000に近い心地よい筆記が可能なのもよい。

数年使ってみないとわからないが、耐久性でも大きな問題は起きないと思われる。ネット上でまったく話題にならないシャープペンであるが、質実剛健を100円程度のシャープペンに求めるならビクーニャシャープペンはお薦め。