2016/08/27

ダイレクトボックス自作(パッシブ)

機材の関係からエレキベースをマイク端子に直結したくなり、ダイレクトボックスを自作してみた。

ダイレクト・ボックスとは

ダイレクト・ボックス(Direct Injection Box、DI) とは、エレキギターやエレキベースをミキサーにダイレクトに入力するための中継ボックスで、ギター等の高インピーダンスを、低インピーダンスに変換し、なおかつバランス伝送するためのもの。低インピーダンスに変換できれば、マイク入力等に直接挿すことが可能になる。

もともとギターやベースはアンプから音を出して、それをマイクで録音するという方法が主流だった。ただベースに関しては、よりクリアな音を求め、アンプを介さずに直接コンソールに入力するケースも多い。レコーディングだけでなく、ライブなどでも同じようにベースはアンプを使わずに、DI経由でPAから直接音を出すことも多い。

ロー出しハイ受け

音響機器の接続では、基本的に「ロー出しハイ受け」と言って、入出力インピーダンスを考慮する必要がある。 業務機器のマイク入力(XLRバランス)の場合、多くは2kΩ前後の入力インピーダンスを持つ。 マイクの出力インピーダンスはSM58のようなダイナミックマイクの場合は150~300Ωぐらい。 その差は10倍近くあり、ちゃんとロー出しハイ受けになっている。比にすると1:10というところ。
エレキベースの出力インピーダンスは、パッシブタイプでは250k~500kΩぐらい。 アンプの入力インピーダンスは1MΩはある。これもロー出しハイ受けを守っている。少なくとも1:2ぐらいは確保されている。
しかし、ベースを直接ミキサーなどに挿した場合、マイク入力、ライン入力共に、ハイ出しロー受けになってしまうため、周波数特性が大きく崩れてしまう問題がある。ライン入力の場合は明らかな出力不足になる。これを解決するのがDI。

ちなみに昔のマイクの出力インピーダンスは600Ωで入力も600Ωとしてインピーダンスマッチングを取っていた。電力的には最大になり、もっとも効率がよいとされている。しかし、いつしかロー出しハイ受けが主流となってしまった。これは受ける電圧を最大にしたいからだろう。マッチングを取ると電力は最大でも電圧は出力側の1/2になってしまう。最近はFETなどで受けるので、事情が変わり、電圧が欲しいと言うところかな。入力インピーダンスを高くすれば高いほど受けれる電圧は出力側と同等になってくる。 ただ、あまりに入力インピーダンスが高すぎると、ノイズが増えたり、諸問題が出てくる。実際には数倍から10倍前後が適当ではないだろうか。インピーダンスのバランスの傾向としては1:1のマッチングをとった場合は野太い音で高域少な目という感じで、1:10になると、高域がかなり出てくる。それ以上だと、こんどは低域が物足りなくなってくるという感じだろうか。経験的には・・・

工作

今回エレキベースの250k~500kΩはあると思われる出力インピーダンスをマイク入力(2k)に入れるとなると、そのままでは、 およそ125~250:1となって、お話にならない。実際に直結して試してみたら、音量的には問題ないのだが、音質的にはこもってしまい、使える音ではなかった。 ということで、かなりインピーダンスを落とす必要がある。 そうなると安く済ますにはアクティブでないと、まともなインピーダンス変換は無理。 そう思いつつも、まずは手軽なトランスを試すことにした。 安いサンスイのST-75は巻き数比が4.15:1なので、 4.15^2=17.2225となり、インピーダンスを1/17まで落とすことができる。 250kΩの出力インピーダンスの場合は 250 / 17 = 約14.5となり、 およそ14.5kΩ程度にまで落とせる。 マイク入力が約2kΩなので、 14.5k:2k で 7.3:1 となり、 まだハイ出し、ロー受け状態。 まぁそれでも音は出るし、ベースという特性上、高い周波数が削れても大きな問題はないため、まずは試してみることにした。

SANSUI ST-75 仕様

購入価格 570円 160821
インピーダンス一次 10kΩ
インピーダンス二次 600Ω
直流抵抗一次 420Ω
直流抵抗二次 21Ω
巻数比 4.15:1
形状 Eコア
質量 13g



サイコロのように小さいトランス。

回路図はこんな感じ。アンバランスをトランスでバランスに変換して出力しているだけ。トランスの比で約1/17にインピーダンスを落としている仕組み。XLRの1はGND、2はHOT、3はCOLD。 GNDの配線は結構悩むところだが、ベースのGNDと接続しないとノイズが出るので、つなげている。市販品だとグランドリフトさせて切り離せるようになっている。自宅で使う分には問題ないということで、COLDとGNDをつなげている。センタータップには何もしていない。

適当なケースに納めてみた。トランスは振動を拾うので、IC用のスポンジを下に敷いてみた。

蓋を閉めたところ。フォーン部分の強度がやや不足だが、つなぎっぱなしにするので大きな問題はなし。


音を出してみたら思ったほど悪くない。トランスの特性からか軽めで低音不足を感じるが、録音後の補正でなんとかなるレベルなので、今回の用途では問題ない。 補正なしで満足行く音にしたい場合は、アクティブ回路を入れるなどの細工が必要になるが、そうでない場合はトランスだけでも使えるという感じ。

下のサンプルはダイレクトで補正なし。ベースはYAMAHA RBX-270でパッシブベース。


Focusrite 2i2のHi入力(エレキギター、ベース用入力)と比較すると、インピーダンスの関係で高域不足になっているが、こもるという感じでもない。結局ベースなので気にならないレベル。ギターだと高域不足は不満かもしれない。

また、このDI経由でライン入力(10KΩ)にも挿してみた。比では1.7:1となり、インピーダンス的にはよい方向。音を聞いてみると音色的にはほとんど同じ。問題はラインレベルではあまりゲインを上げられないところにあった。最大にしても音量不足となってしまった。ゲインを上げるとアンプノイズが乗ってくるので、やはりマイク入力に入れた方が良いという結論。

トランスをコツコツ叩いてみる。そのままの音が入る。 ACアダプタにトランスを近づけてみる。ハムのような音が入ってくる。 音叉を近づけてみると、440Hzがキレイに入ってくる。 ということでトランス式は環境の影響を受けやすいので、置く場所は重要。

使い勝手

パッシブで電池不要なので、基本的につなぎっぱなしにしておける。 回路もコンパクト&シンプルなのも魅力。 宅録でたまに録音する程度なら、わりと実用的かもしれない。 実はパッシブを作る前にFETを利用したアクティブも自作を検討していたのだが、この安価なパッシブで十分という結論。